毎年秋に“悠久”を感じる奈良の風物詩 ~奈良国立博物館 正倉院展2017

奈良博の秋の風物詩、正倉院展の特設テント

 

 

今年の秋も奈良に「正倉院展」がやってきた。終戦の翌年に行われた「正倉院御物特別拝観」を第1回と数え、2017年の今年は69回目を迎える。第1回は現代では考えられないほど交通や食糧事情が悪かった時代であったが、現代とほぼ変わりない会期で、現代とあまり変わりない15万人の観客を集めた。まさに敗戦に打ちひしがれた国民に希望を与えた展覧会だった。

 

多種多様な1200年前の美術品が揃う正倉院の宝物から選んだ出展品の今年の見どころは「2D美術」。すなわち平面で表現される、屏風・布・箱の装飾に名品が多いと感じた。

 

「羊木臈纈屛風(ひつじきろうけちのびょうぶ)」は、蝋を塗った布の部分だけを着色させないよう制作された屏風で、ペルシア的な意匠をベースに鹿にも見える羊が表現されている。遠く離れたシルクロードのロマンを感じさせるとても美しいデザインだ。

 

羊木臈纈屛風

 

 

「碧地金銀絵箱(へきじきんぎんえのはこ)」は、献物を入れる箱だ。神秘的な淡青色の下地に、金銀泥(きんぎんでい)で花鳥の文様が描かれている。1,200年前の職人の技術と、1,200年後の今に伝わる強運には脱帽する。

 

碧地金銀絵箱

 

 

「最勝王経帙(さいしょうおうきょうのちつ)」は、複数の経典や絵巻をまとめて包むための布で、大和国の国分寺に納める金光明最勝王経(こんこうみょうきょうさいしょうおうきょう)を包んだものと考えられている。幾何学的なデザインがいかにも天平を感じさせ、繊細に仏をあしらった織り込みは見事だ。

 

最勝王経帙

 

 

他にも、名品が揃っていることは言うまでもない。今年の目玉として読売新聞社によるチラシにも採用されている「緑瑠璃十二曲長坏(みどりるりのじゅうにきょくちょうはい)」は、遠いシルクロードの果てからやって来たと感じさせる緑色のガラス製の盃だ。明らかに中世以前の日本にありえないと感じさせる珍品で、口縁の屈曲のようなデザインが美しい。

 

緑瑠璃十二曲長坏

 

 

正倉院とは、奈良時代には東大寺以外のどの南都の大寺にもあった様々な貴重な品を収める蔵のことだ。東大寺のものだけが奇跡的に現代まで残っており、756(天平勝宝8)年の聖武天皇の四十九日の法要の際に、光明皇太后が聖武天皇遺愛品を東大寺の廬舎那仏(大仏)に奉献したのが始まりだ。献納品の目録は「国家珍宝帳」などが今に伝わっており、1,200年前の朝廷の姿を知る超一級の史料となっている。

,

756年は、イベリア半島に勢力を伸ばしたイスラム勢力がコルドバを都に後ウマイヤ朝を建国した年にあたる。以降700年間、イベリア半島ではイスラム教徒とキリスト教徒の抗争が続くが、一方でイスラム商人と中継するイタリア商人の繁栄が続くことになる。奈良時代は西洋でも日本でも、現代につながる国家や民族意識が成立した時代と言える。

 

1,200年という時間は“悠久”と表現するしかない。そんな“悠久”の時間を見せてくれる展覧会が、毎年開かれることは実に素晴らしい。

 

 

日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。

「ここにしかない」名作に会いに行こう。

 

 

正倉院展の主催・奈良博と定番パートナー・読売新聞による正倉院の完全ガイド

 

 

奈良国立博物館 正倉院展2017

http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2017toku/shosoin/2017shosoin_index.html

http://www.yomiuri.co.jp/shosoin/

会期:2017年10月28日(土)~11月13日(月)

会期中休館日:なし