東京駅丸の内北口・ステーションギャラリーの「横山華山(よこやまかざん)」展
に行ってきました。横山華山は江戸時代後期の京都画壇の絵師で、岸駒(がんく)に
師事したものの、様々な画派から吸収した独自の画風を築き上げます。明治時代まで
は人気絵師でしたが、昭和になって忘れられていました。
展覧会チラシには
「見ればわかる」とコピーが付けられています。その通り鑑賞するとびっくりするほ
どの腕前であることがわかります。「こんな絵師がいたのか」と思わずつぶやいてし
まいます。訪れたのは会期末の平日でしたがかなり混雑していました。話題を集めて
いたことがうかがえます。
来年2019年春以降に仙台と京都に巡回します。
見逃した方はわざわざ遠征する価値があります。

横山華山は
江戸時代後期の京都画壇で、呉春や岸駒の次の世代に相当します。呉春の弟子・松村
景文(まつむらけいぶん)や岡本豊彦(おかもととよひこ)、岸駒の嫡男・岸岱(が
んたい)らとほぼ同世代です。福井藩士に生まれますが、西陣の旧家の養子となった
ことで、京都画壇のみならず中国画や長崎の西洋がなど様々な画風を見て技術を学ぶ
機会に恵まれます。
華山は岸駒に師事しますが岸派には属していません。岸
駒から独立させてもらったわけではなく、自由奔放に絵師人生を送ります。また当時
の絵師としては珍しく狩野派や土佐派の師から学んでいません。形式にとらわれずと
ても器用に創作する腕を身に着けますが、我の強い人物だったのかもしれません。華
山の画風は様々な様式を使い分けたり、ブレンドさせたりしていることに特徴があり
ます。

丸の内北口ドー
ム内を臨む美術館の回廊
展覧会は、華山が曾我蕭白(そがしょうはく)の画風を学んだ作品から
展示が始まります。蕭白作品を模写したようにも見える瓜二つの華山作品と並べて展
示されているものもあります。華山の腕の良さが最初からよくわかります。ボストン
美術館蔵「寒山拾得図」は表現がとても洗練されており、明治期の作品のように見え
るほどです。水墨画ですが輝きを放っています。
人物画は四条派の影響が目
立ちます。「唐子図屛風」は、子供の愛くるしい瞳と天真爛漫に遊んでいる姿が、金
碧の中に実に上品に表現されています。子供の描写は小さいのですが、余白が大きい
ことから充分に効いています。構図の取り方が絶妙です。明治時代には大丸の創業一
族・下村家が所蔵していました。商家を飾る屏風として極上品です。
花鳥画
では応挙の写実表現を感じます。雪が積もった枝に黒い鳥がとまる「雪中鳥図」は、
おそらく雪に着色せず紙の地色で表現していると思われます。近代絵画のように奥行
きを上手に表現した富士山の絵は、後の横山大観の画風を先取りしているようです。
仙境で交わる人々を描いた「蘭亭曲水図」は池大雅から学んだのでしょうか、実に優
雅な文人画です。
華山はとても器用で、様々な画風を描き分ける絵師です。
近代を先取りしたような新しい表現にも秀でており、本当に天才のように思えます。
そんな華山の魅力が凝縮されているのは、展示最後の京都の人々を描いた風俗画だと
思います。
「天明火災絵巻」は火事から逃げ惑う人々を描いたもので、平安
時代の「伴大納言絵巻」を彷彿とさせるようなリアルな描写が目を引きます。火事と
いうモチーフ自体もあまり聞いたことがありません。現代も京都の奇祭として知られ
る「やすらい祭図屏風」を見ると、現代も江戸時代と祭の様子が変わっていないこと
がよくわかります。行列する人々の生き生きとした表情も魅力的です。
「祇
園祭礼図巻」は、上下巻30mにおよぶ大作です。祇園祭の山鉾巡行をきわめて精緻に
描いています。写真に撮ったようです。後世に中断した山鉾を復活させるときの参考
資料にもなっているようで、歴史的にもきわめて貴重です。
想像もつかない
ような手間暇をかけないと描けないように思えますが、実際の山鉾の飾り付けを観察
できるのは組み立てられている5日間ほどに限られます。華山の観察力と描くスピー
ド、表現の秀逸さにはまさに驚愕します。

華山が大
正・昭和の頃には国内では忘れられるようになったことは、伊藤若冲や曾我蕭白と同
様です。京都の絵師は、本流の四条派以外は大正・昭和以降は忘れられる傾向が目立
ちます。
一方欧米のコレクターたちからは高い評価を受けます。フェノロサ
やビゲローたちも多く作品を購入しており、国内だけでなく欧米の主要美術館に作品
が多いことも華山の特徴です。展覧会にもボストン美術館などから多くの作品が出展
されています。
若冲や蕭白と同じく、「奇想の絵師」として評価が定着して
いくことが期待されます。

東京駅丸の内口
駅前広場
ステーションギャラリーの前には、東京駅丸の内口の巨大な駅前広
場が美しい姿を見せています。東京駅を取り巻く摩天楼の中に、赤レンガと緑の芝生
が実に美しく映えています。昨年2017年末の完成以来、私は初めて訪れました。ま
だの方はぜひ訪れてみてください。
こんなところがあります。
ここにし
かない「美」があります。
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東京ステーションギャラリー
横山華山
【美術館による展覧会公式サイト】
【主催メディアによる展覧会公式
サイト】
主催:東京ステーションギャラリー(公益財団法人東日本鉄道
文化財団)、日本経済新聞社
会期:2018年9月22日(土)~11月11日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~17:30(金曜~19:30)
※10/14までの前期展示、10/16以降の後期展示で一部展示作品/場面が入
れ替えされます。
※前期・後期展示期間内でも、展示期間が限られている作品/
場面があります。
※この展覧会は、2019年4月から宮城県美術館、2019年7月
から京都文化博物館、に巡回します。
※この美術館は、常時公開している常設展
示はありません。企画展開催時のみ開館しています。
◆おすすめ交通機関◆
JR「東京」駅下車、丸の内北口改
札から徒歩0分
東京メトロ 丸の内線「東京」駅から徒歩3分、東西線「大手町」
駅から徒歩5分、千代田線「二重橋前」駅から徒歩7分
JR東京駅から一般的なル
ートを利用した平常時の所要時間の目安:0分
※この施設には駐車場はありません。
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