
飛び跳ねんばかりに新鮮な大根
了徳寺(りょうとくじ)は、京都の御室・仁和寺の近くの鳴滝(なるたき)にある親鸞聖人ゆかりの寺だ。毎年12月に行われる「大根焚き(だいこんたき)」がよく知られている。師走に入ったことを知らせる京都の風物詩で、とても清楚ながらも冷たい冬の空気に張り詰めた体をホクホクに温めてくれる。
大根焚きとは、お釈迦様が悟りを開いたことに感謝する法要を起源とするもので、由来や意味合いは行われる寺によって異なる。煮た大根をふるまうこと、12月を中心とした冬に行われること、の2点は共通で、京都のみならず関西一円で行われる。
野菜を煮ることを関西弁では「たく」と言うため「大根焚き」と呼ばれる。現在は燃やすことを意味する「焚き」という漢字を使うのは、昔は現在ほど同音異義語の区別が厳密ではなかったのだろうか、理由はよくわからない。日本語はこうした例が非常に多いので本当に苦労する。

寺の石標はとてもわかりやすい
鎌倉時代、浄土真宗の開祖・親鸞聖人が愛宕山を訪れた帰路に鳴滝に立ち寄った。その際村人に説法をし、感銘した村人たちはお礼に塩炊きの大根をふるまった、という故事が行事の由来だ。了徳寺は現在も真宗大谷派であり、親鸞聖人の命日の法要である「報恩講(ほうおんこう)」としても行われる。
毎年12月9日と10日の2日間、曜日に関わりなく行われる。当日の早朝、近隣の亀岡市で掘り出された大根3,000本が境内に並ぶ。境内一杯を使って大根調理が行われ、大根を炊く湯気の熱気は冬の寒空の中でもとても元気を与えてくれる。

右が「大根焚」、左が「お斎」
大根焚は本堂の広間で味わえる。2016年時点で写真右の大根と薄揚げを煮た「大根焚」が1,000円、写真左の「お斎(おとき)」と呼ばれる、かやくご飯に大根の葉のおひたしと大根焚がセットになったものは1,600円だ。少しお高いとお感じの方がいらっしゃるかもしれないが、お高いと感じる分は寺へのご志納と考えるとよりおいしく頂けるのではなかろうか。寺にとっては年に一度のハレの日で、寺や行事の維持費を蓄える貴重な機会だと私は思う。
醤油と塩による味付けはシンプルで、隠し味に生姜を加えているのではないかと思うほどに、よく体が温まる。わざわざ来てよかったと思える瞬間だ。お斎のかやくご飯も大根の味付けによく合う、まさに京都らしい素朴な炊き込みご飯である。

活気にあふれる境内で親鸞聖人もご満悦だろう
大根焚きは12月の京都では多く行われる。開催日は異なるが、各寺を巡って味比べをしてみるのも興味深い。
大根焚きを紹介する観光サイト
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。
京都在住の売れっ子エッセイストが語る冬の京都の愉しみ方の決定版
了徳寺「大根焚き」

毎年12月9日・10日
