東京・六本木・国立新美術館で開催されている「トルコ至宝展」を見てきました。
オスマン帝国は500年にもわたって文明の十字路を中心に広大な領地を支配してきま
した。ヨーロッパとアジアの”いいとこ取り”をしたようなとても美しい文化財が、
イスタンブールから大挙来てくれています。
- 金細工と宝石の大きさには
驚愕、版図が大きい帝国でないとできない世界最高峰の宝飾芸術 - イスラム
的な幾何学模様やチューリップをあしらったデザインは、文明の十字路の賜
展覧会場は、オスマン帝国の皇帝の居城・トプカプ宮殿の内部を
模して造営されています。そんな演出に展示品はどれも輝いています。

トプカプ宮殿の
遠景
今回の展覧会のほとんどはトルコ・イスタンブールにあるトプカプ宮殿
の所蔵品です。1453年にオスマン帝国7代皇帝・メフメト2世がコンスタンチノープ
ルを陥落させ、東ローマ帝国を滅亡させます。その直後から皇帝の居城として建造が
始まったのが現在のトプカプ宮殿です。
宮殿名の日本語カナ表記は「トプカ
ピ」が永らく用いられてきましたが、近年はトルコ語の発音に合わせて「トプカプ」
と表記・発音するようになっています。
【Wikipedia オスマン帝国】 オ
スマン帝国の勢力図
トプカプ宮殿は、オスマン帝国が全盛期を迎えた
16cに最も華やかな時代を迎えます。帝国の版図は地中海の東半分と黒海/紅海にお
よびます。神聖ローマ帝国の首都・ウィーンがオスマン軍によって包囲され、ヨーロ
ッパ中がイスラムの脅威に震え上がります。ポルトガル/スペインが大航海時代を幕
開けたのは、オスマン帝国を避けてアジアから直接胡椒を買い付けようとしたためで
す。
トプカプ宮殿はその後19c半ばまで皇帝の居城として使用され、トルコ
革命でオスマン帝国が滅亡した後は、共和国政府によって1924年から博物館として
一般公開されています。都市名としてイスタンブールが使われるようになったのも、
このトルコ革命以降です。

展覧会場の入口
イスタンブールは1453年のコンスタンチノープル陥落以降、20cの二度の世
界大戦を含め一度も戦災にあっていない、世界的にも稀有な都市です。日本では1477
年に終結した応仁の乱以降、戦災を免れている京都とほぼ同じ期間の長さです。木造
建築の京都はその後幾度も大火の憂き目にあっています。トプカプ宮殿に驚愕の至宝
がのこされているのは、石造りで戦災を免れたことが何といっても大きいのです。
【展覧
会公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています
展示
は、皇帝の権力を象徴する品々から始まります。「玉座」と呼ぶにふさわしい、貴賓
を醸し出す椅子が最初に目につきます。
「スルタン・マフムート2世の玉座」
です。背もたれの上に、仏像の光背のように据えられた金細工のオスマン帝国の国章
が、この玉座に座って謁見する皇帝を輝かせています。19c初頭にフランスで造られ
たもので、深い紅色のベルベットのデザインはとてもフランス的です。遠い異国との
交流を見せつける逸品です。
歴代皇帝の花押(かおう)にも目を引かれます。
花押とは署名のことで、日本の権力者にもよく見られます。日本のものとは異なり、
文字がとても複雑です。色紙へのサインの如く、流れるように書ける文字とは到底思
えません。半面、偽造が困難であり、権威づけにはふさわしい紋様に見えます。多民
族を支配したオスマン皇帝ならではの、究極に神格化されたデザインです。

トプカプ宮殿の
ハレム
金額査定できないと思えるほど、度肝を抜かれるような大きさのエメ
ラルドやルビーが散りばめられた様々な宝飾品も、オスマン美術を象徴しています。
宝石を彩った宝飾品の中で、豪華さと気品のバランスが表現されたものはオスマン美
術が世界でも随一と感じます。この展覧会のための保険金が、目の玉が飛び出るよう
な額であることは容易に想像できます。
オスマン皇帝の権威の象徴としては、
「カフタン」と呼ばれる皇帝の衣装に加え、「水筒」にオスマン帝国らしさを感じま
す。カフタンは中国の清朝皇帝が着用した礼服との共通点を感じます。トルコにはア
ジアの血が流れていることを示すデザインです。
水筒は、アジア内陸の遊牧
民族になくてはならなかった水の確保を象徴します。前面に宝石と金細工が散りばめ
られており、とても”水筒”には見えません。遊牧民族に権威を見せつけるには、か
えってわかりやすいデザインだったのでしょう。

イスタンブール
のグラン・バザール
この展覧会では「チューリップ」がもう一つのキーワー
ドになっています。
チューリップは歴史的には17cオランダのバブル経済の
象徴となったことが知られています。そもそも原産はトルコと中近東です。貿易を通
じオランダで脚光を浴びた後、故郷のオスマン帝国で18c前半にもてはやされるよう
になります。オスマン帝国が最盛期を過ぎ、領土が縮小し始めたアフメト3世の治世
で、一時の平和な時代を迎えた「チューリップ時代」です。
国力が曲がり角
を迎えた後に、文化が繁栄するのは古今東西よくあることです。この展覧会でもチュ
ーリップ時代の名品が数多く出展されています。
色とりどりのチューリップ
用花瓶は、饅頭型の底から細長い首が伸びる典型的なアラブビアン・ナイトを思わせ
るデザインです。ヨーロッパから逆輸入されたチューリップと、伝統的なアラブ文化
が融合した素晴らしい造形です。

イスタンブ
ールは数年前に訪れたことがあります。とても活気のある町並の中に、きちんと過去
の遺産がのこされている印象を持ちました。この展覧会で以前に訪れた光景を思い出
し、感慨をあらためた思いです。
展覧会では、明治期に日本からもたらされ
た数々の日本美術も登場します。その背景には両国の深い友情の絆があります。6月
から始まる巡回先・京都展で絆の話をお伝えしたいと思います。
こんなとこ
ろがあります。
ここにしかない「空間」があります。
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<東京
都港区>
国立新美術館
トルコ文化年2019
トルコ至宝展 チューリップ
の宮殿 トプカプの美
【美術館による展覧会公式サイト】
【主催メディアによる展覧
会公式サイト】
主催:国立新美術館、トルコ共和国大使館、日本経済新
聞社、TBS、BS-TBS
会場:企画展示室2E
会期:2019年3月20日(水)~5
月20日(月)
原則休館日:火曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~17:30(金
土曜~19:30)
※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※こ
の展覧会は、2019年6月から京都国立近代美術館、に巡回します。
※この美術館
は、コレクションの常設展示はありません。
<トルコ共和国イスタンブール
市>
トプカプ宮殿
【公式サイト】https://topkapisarayi.gov.tr/en(英語)
◆おすすめ交
通機関◆
東京メトロ・千代田線「乃木坂」駅下車、6番出口から徒歩2分(美
術館直結)
都営・大江戸線「六本木」駅下車、7番出口から徒歩5分
東京メ
トロ・日比谷線「六本木」駅下車、4a番出口から徒歩8分
JR東京駅から一
般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
東京駅→東京メトロ丸の
内線→国会議事堂前駅→東京メトロ千代田線→乃木坂駅
※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、
渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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