
八重桜の借景が明るい日差しに映える
奈良国立博物館で特別展「春日大社のすべて」が始まりました。
春日大社は藤原氏の氏神として奈良時代に創建され、藤原氏が隆盛を極めた平安時代の宝物が多く伝わることから「平安の正倉院」とも言われています。展示作品も国宝が目白押しで、最高権力者でないと持ちえないと思わせる圧巻の工芸品が並びます。
会場はさながら秋の正倉院展のような趣があり、「平安の正倉院」と呼ばれることに納得できます。神社に伝わる宝物では質量ともに春日大社は日本トップクラスです。とても重みのある展覧会です。
春日大社は、社殿をほぼ20年毎に修理造営する「式年造替(しきねんぞうたい)」を2年前の2016年に60回目を終えています。2018年は創建1250年目ですので、単純計算して創建以来一貫して式年造替を行ってきたことになります。
それだけ継続できたのは何といっても藤原氏の氏神であることが大きく、宝物の質の高さも藤原氏さまさまです。
春日大社は東大寺・興福寺が壊滅的被害を受けた南都焼討では大きな被害を免れています。また神社の宝物は蔵に収められることが一般的で火災の被害を受けにくいこともあり、現代にかけがえのない宝物が伝わっています。
2016年には「国宝殿」が新装されて宝物もかなり見やすくなりましたが、今回の奈良博の展覧会では一堂に会することに大きな価値があります。
会場で最初に観る者を出迎えるのは、やはり神の使いである「鹿」でした。京都・細見美術館が持つ金銅像「春日神鹿御正体(かすがしんろくみしょうたい)」は、鹿の胴体に付けた鞍の上に神の“正体”を現すオブジェ(本地仏、ほんじぶつ)がのせられています。
まさに鹿が神を春日社に連れてきたことを示しています。とても荘厳で神秘的な印象を与えます。わかりやすく春日信仰を表現した逸品です。
毎年12月の春日若宮おん祭の舞楽の演奏に昭和50年代まで長年用いられてきた巨大な太鼓「鼉太鼓(だだいこ)」は圧巻です。源頼朝の寄進とされ、800年前の繊細な彫刻と鮮やかな色彩が近年の修理で蘇っています。大きさにたがわず、とても優雅な趣を醸し出しています。
【展覧会公式サイト】ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています
鞘(さや)の金の螺鈿細工が観る者を惹きつける「金地螺鈿毛抜形太刀」は、平安時代を代表する刀です。天皇や神のような絶対的な存在以外は何人も触れてはならないと聞こえてくるようなオーラを発しています。武士が用いる刀にはありえない品格と優雅さを表現した絶品です。
春日大社に多く奉納される武具では甲冑の銘品もお見逃しなく。国宝の4点が前後期入れ替わり展示されますが、5/8-15/3だけは4点が揃って展示されます。保存状態がよく600年以上前の輝きを保っています。とても大切にされてきたことが、とてもよくわかります。

館の外壁に英語の看板、奈良博も外国人観光客の取り込みに躍起
展覧会では外国人観光客の姿が目立っていました。近年は展示解説パネルや展示作品リストを日英中韓の4か国語で用意する展覧会が増えています。
訪れた国の文化を味わえる美術館・博物館は観光の最も基本的なコンテンツです。フランス語や中国語繁体字など博物館来館者に多いものの未対応の言語はまだあります。奈良の至宝を展示する奈良博が、より多くの観光客にフレンドリーな博物館になることを願ってやみません。
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。
奈良国立博物館
創建1250年記念特別展「国宝 春日大社のすべて」
https://www.narahaku.go.jp/exhibition/2018toku/kasuga/kasuga_index.html
主催:奈良国立博物館、春日大社、朝日新聞社、NHK奈良放送局、NHKプラネット近畿
会期:2018年4月14日(土)~6月10日(日)
原則休館日:月曜日
※5/13までの前期展示、5/15以降の後期展示で一部展示作品が入れ替えされます。
※前期・後期展示期間内でも、展示期間が限られている作品があります。
※この展覧会は、他会場への巡回はありません。
