奈良・学園前の大和文華館(やまとぶんかかん)で高麗の金属工芸に焦点を当てた展覧会が開催されています。すでにレポートした大阪・東洋陶磁美術館と奈良・寧楽美術館の両「高麗青磁」展とともに、同時期開催の「高麗」美術展三点セットを形成しています。
朝鮮半島の仏教美術は、高麗と一つ前の統一王朝・新羅の時代に最も花が開きました。高麗では金属工芸が盛んに行われ、仏具・梵鐘のほか鏡・食器など生活全般の道具にも、多くの金銀を用いた荘厳な細工がなされています。
青磁とともに高麗王朝の美意識を感じさせる名品が揃った展覧会です。青磁だけでは高麗文化の魅力は語れません。

アカマツが美しい大和文華館の入口
大和文華館の展覧会にはいつも、日本中の美術館・博物館・寺社・個人から多くの出展を得ていることに驚かされます。展覧会の企画運営力や学芸員に対して、国立博物館以外では日本トップクラスの信用があるように思えます。今回の展覧会でも東京国立博物館や三井寺など、数多くの所蔵先から名品が集まっています。
展覧会チラシの表紙にも採用されている、東京国立博物館所蔵の銀製鍍金観音菩薩・毘沙門天像小仏龕は5cmほどの大きさに二体の仏様が優美に表現されています。仏龕(ぶつがん)とは、仏像や経文を安置するために壁や塔に設けられた小部屋、もしくは容器のことをさします。
手で握りしめることができるよう配慮して造られたように見えます。手のひらを開けてこの仏龕を目にすると心はとても穏やかになるでしょう。信心深い貴族が常に身に着けていたような、仏教を尊ぶ思いを感じさせる名品です。
この展覧会を見ていると、仏教美術にしろ生活用具にしろ、高麗美術には「静けさ」「荘厳」という形容詞が合うように思えてきます。高麗時代の社会情勢や文化の背景を理解するにはまだまだ勉強が足りませんが、文化の隆盛をより重視する時代だったことだけは間違いないような気がします。
高麗の仏教文化・美術のレベルの高さを象徴する場所が世界遺産に指定されています。韓国東南部の主要都市・大邱(テグ)近郊にある海印寺(ヘインサ)の大蔵経板殿(だいぞうきょうはんでん)です。
世界に現存する仏教経典の中で最も内容が正確なものの一つとされる高麗八萬大蔵経(こうらいはちまんだいぞうきょう)が収められた建物です。大蔵経板殿室内に経典が書かれた8万枚に及ぶ版木が整然と並ぶ姿は芸術的です。
高麗八萬大蔵経は高麗王朝が13cに中国の経典を元に版木に彫らせたもので、その緻密な作業が高く評価されています。現在日本で主に用いられている大正新脩大藏經(たいしょうしんしゅうだいぞうきょう)も、高麗八萬大蔵経を元に大正時代に編纂されたものです。
東洋陶磁美術館・寧楽美術館とともに高麗展三点セットを見ると、高麗美術の静けさの表現は日本にはないものだと感じてきます。異文化体験はいつも勉強になります。
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
大和文華館
特別展 建国1100年 高麗 ―金属工芸の輝きと信仰―
【美術館による展覧会公式サイト】
主催:大和文華館
会期:2018年10月6日(土)~11月11日(日)
原則休館日:月曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00
※展示期間が限られている作品があります。
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。
◆おすすめ交通機関◆
近鉄奈良線「学園前」駅下車、南口から徒歩7分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:55分
JR大阪駅→JR環状線→鶴橋駅→近鉄奈良線→学園前駅
※この施設には無料の駐車場があります。
※駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
________________________________
→ 「美の五色」とは ~特徴と主催者について
→ 「美の五色」 サイトポリシー
→ 「美の五色」ジャンル別ページ 索引 Portal
