奈良博「お水取り+薬師寺名画」 ~お水取りと芦雪ファンは必見


奈良博の冬恒例の「お水取り展」に、今年は「芦雪の襖絵」がプラス

関西のテレビ・新聞報道でほぼ100%「春の訪れを告げる」と枕詞がつけられる東大寺の「お水取り」は今年で1267回目です。奈良時代の752(天平勝宝4)年に始まって以来、一度も途絶えることなく続けられている宗教行事です。驚異的な持続性はおそらく世界一でしょう。

奈良国立博物館でもここ20年ほど、冬に特別陳列「お水取り」を行っています。お水取りは通称で正式には「修二会(しゅにえ)」と言いますが、とても奥が深い修二会を理解するにはもってこいの展示構成になっています。


お水取りで使われる「お松明」が入口を飾る

東新館2階の会場に入ると、僧侶の心地よい読経が聞こえてきます。会場の中心に二月堂の内陣が再現されており、修二会期間中の様々な儀式で読み上げられる声明が流されています。二月堂で普段お参りできるのは外陣だけです。内陣は絶対秘仏の「十一面観音」が納められており、修二会に参加する僧以外は入ることができません。荘厳で神秘的な修二会の儀式の様子がとてもよくわかります。

「十一面観音」は近世以降に絶対秘仏になったようで、誰もお姿を見たことはありません。そのため文化財指定もされておらず、日本トップクラスの究極の“絶対秘仏”の一つです。室町時代に描かれた「二月堂曼荼羅」からは、そのお姿を想像することができます。二月堂の真上に雲に乗って現れた観音様の子供のようなお顔が印象的です。チラシの表紙にも採用されています。

「二月堂修中過去帳(しゅうちゅうかこちょう)」と「二月堂神名帳(じんみょうちょう)」も積み重ねてきた歴史の重みを感じさせます。「過去帳」は東大寺や二月堂にゆかりのあった人の名前が奈良時代の創建当初から順に書き足されており、日本史の教科書のように次々と著名人の名前が現れます。展示されるのはこの中の一部ですが、仏師の運慶や快慶の名前も見えます。

「神名帳」は二月堂の守護神として勘定する日本中の神々のリストです。いずれも修二会期間中に延々と読み上げられ、その節やリズムの聞き心地にファンも少なくありません。

【公式サイトの画像】 「お水取り」主な出陳品

西新館2階は「薬師寺の名画」の会場です。「福寿院」は明治まで薬師寺にあった塔頭で、長澤芦雪と奈良で活躍した画僧・明誉古磵(みょうよこかん)による襖絵だけが薬師寺に伝わっています。薬師寺の鎮守・休ヶ岡八幡宮に伝わる「板絵神像」とともに修復作業を終え、公開されています。

奈良の寺にある江戸時代の襖絵が公開されている例はあまり多くなく、貴重な機会です。芦雪が代表作を残した南紀滞在後の作品で、「松虎図」の虎の目にはまさに芦雪らしい愛くるしさを感じることができます。古磵の「富士図」は、芦雪の「松虎図」の裏面に描かれていたものです。当時の上方の人がほとんど見たことがない富士山への郷愁を誘うように、山の精神性を強調して描かれています。

【公式サイトの画像】 「薬師寺の名画」主な出陳品

冬の奈良は空気がきれいです。山焼の名残が残る若草山が「黒く」見えるのは2月だけです。奈良博からよく見えます。ぜひ訪れてみてください。


山焼きで焦げた芝生が残る2月の若草山

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。


日本の仏教寺院の法会の原点はとても奥が深い

奈良国立博物館 特別陳列「お水取り」
http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2018toku/omizutori/2018omizutori_index.html

主催:奈良国立博物館、東大寺、仏教美術協会
会期:2018年2月6日(火)~3月14日(水)
原則休館日:2月19日(月)、2月26日(月)
※東大寺二月堂お松明期間中は月曜日も開館
※この展覧会は、他会場への巡回はありません。

奈良国立博物館 特別陳列「薬師寺の名画 ―板絵神像と長沢芦雪筆旧福寿院障壁画―」
http://www.narahaku.go.jp/exhibition/2018toku/yakushiji/yakushiji_index.html

主催:奈良国立博物館、薬師寺
会期:2018年2月6日(火)~3月14日(水)
原則休館日:2月19日(月)、2月26日(月)
※東大寺二月堂お松明期間中は月曜日も開館
※この展覧会は、他会場への巡回はありません。