赤影、影の軍団、ハットリくん、NARUTO。こう聞くとほとんどの方がお判りかと思いますが、忍者が主人公の映像作品です。子供から大人まで、すっかり日本人の人気者になって久しく、Ninjaは国際共通語として世界的も有名です。
滋賀県の焼きものの里・信楽に行った際に、前から行きたかった甲賀流忍術屋敷に立ち寄りました。ここは江戸時代に忍者がからくりを施した建物が現存し、公開されている日本で唯一の忍者屋敷です。忍者が培ってきた情報収集や防御、攻撃の知恵と息吹が大切にのこされています。
忍者と言うと、とかく映画のスパイのヒーローのようにイメージしてしましますが、忍者も生身の人間です。妖術ではなく現実にできるやり方で忍び(しのび)の厳しい仕事をこなしていたことがとてもよくわかります。忍者の現実の姿を学ぶには、必見の施設です。

屋敷の全景
甲賀は”こうか”と濁らずに発音します。日本で著名なもう一つの忍者集団・伊賀は、濁って”いが”と発音します。ただし地元の人は誤って”こうが”と濁って発音されることに慣れてしまっているようです。
忍者は、敵地に忍び込んでの情報収集や破壊・暗殺、要人の護衛といった特殊な任務に就いた人のことです。中でも情報収集は人類が存在している限りは必要な任務であり、記録が残る時代以前から行われていたでしょう。
一方厳しい環境下で生きたり敵を欺いたりする忍術は、平安時代から日本各地で成立していったと考えられています。中世は何かトラブルがあれば武力抗争に発展するのは当たり前の時代です。そのため特殊な技術である忍術を身に着けた忍者は必要不可欠な人材でした。
忍者はこうした特殊任務へのニーズがとても大きかった戦国時代に最も活躍します。しかし任務の性格上、記録にはなかなか残りません。甲賀と伊賀は、天下統一した信長・秀吉・家康の三傑の本拠である尾張・三河と京都を結ぶ中間点にあります。三傑に仕えたことで後世に名を残すことができたのでしょう。
本能寺の変の際、堺にいた徳川家康による領国・三河への逃避行は、「伊賀越え」としてよく知られています。家康は堺から南山城を通って甲賀に入り、伊賀を通って鈴鹿付近から三河に船で渡ります。
この際、甲賀衆は伊賀衆と共に家康一行を鈴鹿で乗船するまで護衛しています。家康を助けたのは伊賀衆だけではなかったのです。家康を捕まえて光秀に差し出すよりも、家康を逃して恩を売った方が自らの生き残りには有利と判断したのでしょう。

入館受付
甲賀流忍術屋敷は、甲賀衆のリーダー格だった望月氏の屋敷として江戸時代の元禄年間(1688-1704)に建てられました。元禄の頃には武力衝突が起こる世の中ではなくなっていましたが、望月氏は防御の知恵をふんだんに盛り込んだからくり屋敷のようにしました。苦難の歴史を歩んできた甲賀衆の経験が、そうさせたのでしょう。
内部は忍者装束のスタッフによる熱のこもったガイドを聞いた後は自由に見学できます。他の忍者テーマパークに比べて、どんでん返しなど見学者が自由に体験できる”からくり”は少ない印象です。
この建物は300年前の本物です。文化財保護のため、体験できない/触れられない方が適切です。見るだけになることも多いですが、柱や建具の木目には屋敷の住人が300年間使い続けてきた艶(つや)を感じることができます。
数少ない体験としては、とても狭い中二階と三階に隠しはしごで上がることができます。上から客人を監視したり、敵に襲われた際の隠れ場所になる部屋です。中二階は敵が長い刀を振り回しにくいよう、天井の高さは1m強しかありません。戦国時代の忍者の息吹が聞こえてきそうなリアルな空間です。
資料室では戦国時代以降の甲賀衆の歴史を物語る史料や、手裏剣をはじめとする様々な忍者道具が展示されています。手裏剣は思ったより大きく、強い殺傷能力がありそうです。反面重いため数多くは持てなかったでしょう。TPOに応じて、どんな変装が最も怪しまれないかもパネル解説されています。サイエンスが普及していなかった時代の知恵の結晶が忍者だとまさに感じ取ることができます。
見学の最後には広間でお茶の無料サービスをいただけます。健保茶といい、蕎麦茶に近い風味がある薬草のお茶です。忍者は野外でのけがや病気の対処や毒殺などのために、薬草の知識は必須でした。健保茶は古くから忍者の間で親しまれてきており、このお茶を飲んで緊張を解きほぐし、水分や暖を取ったのでしょう。とても味わいのあるお茶です。土産としても販売されているので是非どうぞ。
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
甲賀流忍術屋敷
【公式サイト】http://www.kouka-ninjya.com/
原則休館日:12/27-1/2
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30
◆おすすめ交通機関◆
JR草津線「甲南」駅下車 徒歩20分、車で5分
新名神高速「甲南」ICから車で5分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間20~40分
京都駅→JR琵琶湖線→草津駅→JR草津線→甲南駅
※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約を強くおすすめします。
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