兵庫県西宮市の大谷記念美術館で、明治期に一旦衰退した南画(文人画)に新風を吹き込んだ福田眉仙(ふくだびせん)の展覧会が始まりました。美術館に一括して寄贈された作品を初公開するもので、同時代の他の作家には見られない個性的な作風を楽しむことができます。
- 中国でスケッチ旅行を3年に渡って続け、写実的な中国の風景表現を身に付けた
- 想像の世界ではなく自分の経験に基づいて、南画を表現した
- 後半生を西宮と芦屋で過ごし、中央画壇とは一線を画した制作を続けた
明治以降の南画作品は、富岡鉄斎(とみおかてっさい)や冨田溪仙(とみたけいせん)らに限られることが多く、なかなか目にすることはできません。福田眉仙の”新南画”とも呼ばれる作風は、とても斬新に感じられます。

福田眉仙は1875(明治8)年に相生で生まれ、新聞報道の挿絵画で活躍した久保田米僊(くぼたべいせん)や橋本雅邦(はしもとがほう)に師事し、腕を磨いていきます。雅邦らが創設した日本美術院に参加し、校長となった岡倉天心に深い感銘を受けます。その天心から南画復興を託されたことが、眉仙の関心を中国に向けます。
日露戦争後の1909(明治42)年から3年間滞在し、スケッチを続けます。五感で身に付けた中国の風景は、展覧会でも多くを目にすることができます。
【展覧会公式サイト】 ご紹介した作品の画像の一部が掲載されています
「興隆灘図(こうりゅうたんず)」は、中国の長江の難所の激流に逆らい、人力でロープを引いて船を上流へ引き上げる様子を描いています。眉仙は乗船してこの激流を体験しています。江戸時代の日本人南画家のように、実際の中国の風景を見ずに理想郷として描くとすると、このモチーフはまさに発想されえないものです。
明治以降の南画作品は、江戸時代と比べて水墨画であっても着色される面積が多くなる傾向があります。眉仙の画風にはそれがより顕著に感じられます。スケッチと写生を重視した考えが、着色をきちんとさせたのでしょう。
眉仙の代表作で、姫路市立美術館所蔵の「支那三十図巻」の内、塩田で塩を造る様子を巻物に延々と描いた「自流井図巻」もとても面白い作品です。新南画と呼ばれるにふさわしいモチーフを採用し、そこで働く人々の姿を生き生きと描いています。江戸時代の南画のような、深い精神性を感じさせません。

展覧会では、同時代の作家と眉仙を対比できるよう、館の所蔵作品が展示されています。菱田春草の「秋林遊鹿」は、秋の森に静かに佇む鹿を描いています。春草らしい、写実性と精神性のバランスが保たれた作品です。一方、橋本雅邦の「夏流牧童図」は、深山幽谷の中に生きる牛を描いています。余白の多い水墨画で、江戸時代の南画が重視した精神性を強く表現しています。
このような対比がとても興味深い展覧会に仕上がっています。
1Fのコレクション展の部屋では、伊東深水や北野恒富らの美人画の名作も展示されています。この美術館の所蔵作品の質の高さがわかります。この美術館の企画展を見た後は、併設されているコレクション展を見逃さないようおすすめします。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
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西宮市大谷記念美術館
受贈記念 日本画家・福田眉仙とその周辺
【美術館による展覧会公式サイト】
主催:西宮市大谷記念美術館
会期:2019年1月3日(木)〜2月11日(月)
原則休館日:水曜日
入館(拝観)受付時間:10:00~16:30
※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。
※この美術館は、コレクションの常設展示を行っていません。企画展開催時のみ開館しています。
◆おすすめ交通機関◆
阪神電車「香櫨園」駅下車、南口から徒歩8分
JR神戸線「さくら夙川」駅下車、南口から徒歩18分
阪急神戸線「夙川」駅下車、南口から徒歩20分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
大阪駅(梅田駅)→阪神本線・特急→西宮駅→阪神本線・普通→香櫨園駅
※この施設には無料の駐車場があります。
※道路の狭さ、駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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