
椿山荘の北隣にある、永青文庫も近い
講談社野間記念館は、目白通り沿いの高台に位置する閑静な美術館だ。付近には椿山荘や永青文庫があり、東京都心で鳥や風の音が聞こえる数少ないエリアである。
館の名前の通り、講談社の創業者・野間清治が大正から戦前にかけて収集した作品を母体に、2000年に設立された美術館で、近代日本画のコレクションが充実している。また野間清治が昭和初期の画家百人以上に依頼して十二か月の趣を一枚の色紙に書いてもらった「色紙・十二ヶ月図」と呼ばれる作品群も見応えがある。さっと即興で書いたように見える作品から繊細な描写をしている作品まで、作家の個性も相まってとても多様性に富んでいる。とても興味深い。昭和初期の画壇の様子を知る上でも、とても貴重なものだろう。
野間清治は職業柄もあり、とても画家たちに顔が広い人だったのだろう、この館の近代日本画の東京画壇のコレクションはとも幅広い。そんな幅広いコレクションを楽しめる「川合玉堂と東京画壇の画家たち」展が始まった。
メインに据えるのはやはり東京画壇の重鎮・川合玉堂。「寒庭鳴禽」は、秋の季語である鵯(ひよどり)が枝にとまるさまと、色あせてきた葉の中心に小さく可憐に咲く白い花のバランスが素晴らしい。風が冷たくなっていく季節感を感じさせるとても美しい作品だ。
「渓山月夜」は、玉堂的山水画の秀作だ。夜の渓谷をモチーフにほとんどモノクロの色遣いだけで描いていることから、おぼろげな月明かりの絶妙な空気感が伝わってくる。渓谷にかかる橋には旅人らしき人が歩いている。宿に急いでいるのだろう。人間が生きるベースとなる自然の営みをとても柔らかに表現している。
鏑木清方門下の山川秀峰の美人画「蛍」は、団扇で蛍を追う三人の美女の躍動感を表現している。動きがあるのだがとても清楚に見える。動きに応じて着物の襟がややはだけて紅い裏地を見せているが上品さを失わせてはいない。着物や帯のデザインや質感の表現がとても上質で、帯の濃い目の色遣いが構図を引き締めている。夏に見るともっと美しく見えるかもしれない。
出展作品はどれも、館のある目白台の緑の美しさとよく合う。時間に余裕をもってじっくり静かにご覧になることをおすすめしたい。東京画壇にたくさんの興味深い画家たちがいることに気づけるからだ。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。
講談社野間記念館「川合玉堂と東京画壇の画家たち」展
会期:2017年10月28日(土)~12月17日(日)
原則休館日:月・火曜日
※展示作品は、展示期間が限られているものがあります。
