兵庫県立美術館「プラド美術館展」 ~マドリードまで行く気にさせる展覧会

神戸の兵庫県立美術館で「プラド美術館展」が始まりました。スペイン美術の殿堂・プラド美術館から来日した61点の絵画と9点の書典籍により、17cに黄金時代を迎えたスペイン絵画の奥深さを学ぶことができます。

展示の主役は2人です。スペインにとどまらずヨーロッパ全体の巨匠の中の巨匠と言えるベラスケス、そのパトロンとなった国王フェリペ4世です。

ヨーロッパの中でも最も敬虔なカトリック国だったスペインの文化が絵画のモチーフや表現にも色濃く表れていることがわかります。関西では12年ぶりの「プラド美術館展」です。とても灌漑深い展覧会です。

展示は作品のモチーフに応じて分類された7つの章で構成されています。主役・ベラスケスの作品もほとんどの章で鑑賞することができますが、これは彼の作品が7点、まとまって貸し出されたおかげです。

スペインの国民的英雄であるベラスケスの作品を、プラド美術館がまとまって貸し出すことはまずありません。展覧会の主催者にプラド美術館自身が名を連ねているように、プラドにとっても意気込みのある展覧会なのです。

【プラド美術館公式サイトの画像】 スルバラン「磔刑のキリストと画家」

第1章は「芸術」がテーマです。重厚で敬虔な宗教画では右に出る者がいないスルバランの「磔刑のキリストと画家」が注目です。画家が医者と画家の守護聖人ルカであることを暗示するためにパレットを持たせています。観る者の気持ちを引き締めるスルバランらしい厳格さを堪能できます。

【プラド美術館公式サイトの画像】 ベラスケス「狩猟服姿のフェリペ4世」

第4章の「宮廷」は、もう一人の主役・フェリペ4世が芸術にどのように向き合ったかを学ぶ大切な章です。国力に陰りが見え始めた時に国王になったフェリペ4世は、芸術によってあらためてスペイン宮廷の栄光を確立しようとした国王とも言えます。

ベラスケスにチャンスを与えて巨匠に育て上げ、ルーベンスや諸国の宮廷との交流を通じて絵を見る目を高めます。当時のヨーロッパ宮廷の中でもフェリペ4世のコレクションは随一でした。

「狩猟服姿のフェリペ4世」は、狩猟場に飾るために製作された肖像画です。一見世間知らずのピュアな貴公子に見えますが、眼には凛とした意志の強さを感じさせます。傍らに寄り添う狩猟犬は、まるで太刀持ちのように背筋を伸ばして控えており、国王の威厳を実に効果的に高めています。

【展覧会公式サイトの画像】 コエーリョ「王女イサベラ·クララ·エウヘニアとマグダレーナ·ルイス」

コエーリョは、フェリペ4世の祖父でスペイン帝国の絶頂期の国王フェリペ2世に仕えた宮廷画家です。宮廷肖像画で名高い彼の作品の中でも、フェリペ2世の「王女イサベラ」は傑作として知られます。

イサベラはスペイン領ネーデルラントの統治を父から任されており、ルーベンスは彼女の宮廷画家になっていました。表情には父親譲りの威厳があふれ、白地に金糸で刺繍されたドレスの描写が女性としての華やかさと美しさを極限にまで高めています。統治者の肖像画として完成度が高い作品です。

【プラド美術館公式サイトの画像】 ベラスケス「東方三博士の礼拝」
【プラド美術館公式サイトの画像】 ルーベンス「聖アンナのいる聖家族」

第7章の「宗教」は、聖母や聖家族など17cスペイン絵画の黄金時代をけん引した宗教画が集められています。宗教改革への対抗のために、カトリックの教えをわかりやすく民衆に伝えようと積極的に絵画が活用されました。聖母子の画家として知られるムリーリョはこの時代の代表的な画家です。

ルーベンスの「聖アンナのいる聖家族」は、聖母マリアの母アンナが娘と孫キリストを温かく見守るシーンを描いたものです。聖母マリアが身に着けた服は真紅と青で描かれ、マリアとキリストの肌の白さを一層引き立てています。キリストの手はマリアの豊満な胸に添えられており、新しい家族ができた幸福感を存分に伝えています。

生真面目なプロテスタントの信仰に対抗しようとしたカトリックの戦略をルーベンスが見事に表現した逸品です。


プラド美術館 ゴヤ入口

この展覧会を鑑賞した人の多くは、マドリードのプラド美術館にはどれだけの逸品が揃っているのかとワクワクするでしょう。私は2度訪れていますが、プラド美術館のコレクションの素晴らしさを実に上手に凝縮していると思います。

こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。


プラド美術館のベラスケスにスポットをあてた最新の一冊

兵庫県立美術館 「プラド美術館展 -ベラスケスと絵画の栄光-」
http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1806/index.html
https://artexhibition.jp/prado2018/
主催:兵庫県立美術館、プラド美術館、読売新聞社、読売テレビ
会期:2018年6月13日(水)~10月14日(日)
原則休館日:月曜日
※この展覧会は、2018年5月まで国立西洋美術館、から巡回してきたものです。
※この展覧会は、今後の他会場への巡回はありません。

おすすめ交通機関:阪神電車「岩屋」駅下車徒歩8分、JR神戸線「灘」駅下車徒歩10分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:45分
JR大阪駅(阪神梅田駅)→阪神電車→岩屋駅
【公式サイトのアクセス案内】
※この施設には有料の駐車場があります。

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