京都 泉涌寺 新善光寺 書院初公開 ~凛とした空間と紅葉が素晴らしい

近年は京都の大寺院の塔頭(たっちゅう)の公開が相次いでいます。塔頭は大寺院の住職の中でも高僧として信望を集めた人が住まいとしたこともあり、規模は小さいながらも一級の文化財がのこされているところも少なくありません。

泉涌寺の塔頭の中で新善光寺(しんぜんこうじ)が、方丈と寺宝の初公開を行いました。庭園の公開はあっただけに方丈と寺宝の公開も待たれていました。善光寺本尊を模した阿弥陀如来像や狩野探幽の掛軸に加え、方丈から素晴らしい庭園の紅葉を眺めることができます。泉涌寺らしい凛とした空間美も魅力です。


表門

新善光寺は鎌倉時代の1243(寛元元)年、御嵯峨天皇の勅願寺として、現在地ではなく西陣の晴明神社のあたりに創建されました。御嵯峨天皇は当時流行していた信濃善光寺詣りを望んでいましたが、都からは熊野詣より遠距離で大変です。そのため善光寺本尊を模した阿弥陀如来像を造らせ、あたかも神社の勧請のように、京都における善光寺の出張所にしたのが寺名の由来です。

応仁の乱で焼失すると泉涌寺山内の移り、江戸時代になって現在地に落ち着きます。今回の寺宝初公開では室町時代から江戸時代にかけて天皇の遺品や著名絵師の作品も公開されています。この期間、新善光寺に上流階級からの帰依や交流があったことが分かります。


泉涌寺道から少し下って新善光寺に向かう

最寄りの東福寺駅や東大路のバス停からは、泉涌寺道で知られるゆるやかな参道を上っていきます。途中までは普通の住宅街ですが、泉涌寺の総門をくぐると趣は一変します。泉涌寺道の両側は塔頭の森に覆われ、木々のイオンにあふれた新鮮な空気と木漏れ日の中を進んで行きます。新善光寺は泉涌寺の手前にあります。最初に書院に入ります。


書院から眺める庭園

15年をかけた建物と寺宝の修復が2018年になって完了したことから初公開に至りました。室内は真新しい趣がありとても清潔です。東の山側に造られた庭園を眺めるよう、東側の書院の襖が開放されています。書院と庭園は江戸時代初めの寛文年間(1661-73)に整備されたもので。当時の美意識をじっくりと味わうことができます。

西側の各部屋で寺宝が公開されています。狩野探幽の晩年の作品「鯉図」は、鯉が滝を登れるかが成功の関門となるという登竜門の故事を描いた吉祥図です。晩年らしい静かで趣のある描写が印象的です。

江戸狩野派の名門・木挽町家三代目の狩野周信(かのうちかのぶ)の襖絵・唐人物図は、江戸時代らしい明るさと洗練さを兼ね備えた作品です。中国の楼閣で遊ぶ帝王を描いており、当時好まれたモチーフです。床の間がある部屋にあり、相当なクラスの客人があったことがうかがえます。

渡り廊下を通って本堂へ行くと、本尊の阿弥陀如来とお会いします。鎌倉時代は善光寺信仰が流行し全国で多くの模造が造られました。信濃善光寺の前立本尊もこの頃の制作です。新善光寺の本尊もこのブームに乗ってつくられたものと考えられています。

これが事実であると、飛鳥時代の創建以来絶対秘仏が続いていた善光寺の本尊が、鎌倉時代に摸刻のために開帳されていたことになります。戦国時代には武田信玄によって信濃から連れ出され、信長・秀吉の手を経て信濃に戻っています。元禄時代にも柳沢吉保の命で実在するか確認するために開帳したという記録もあります。

ミステリーですが、確かに1000年以上に渡って災害を免れ、メンテナンスもされず秘仏のまま安置を続けていると考えるのは非現実的でしょう。

信濃善光寺の前立本尊とは異なり、三尊全体ではなく中尊だけを光背が覆っています。柔和なお顔をされていますが、善光寺京都出張所の代表として多くの人々の信奉を受けてきた威厳のような落ち着きも感じられます。

庭から書院を眺めると、吹き替えられたばかりの瓦屋根が美しく輝いています。瓦のデザインも凛としていてとても上質です。泉涌寺らしさが現れています。

庭園では、近距離で混じり合う紅葉と黄葉のコントラストが、面積がコンパクトなだけにかえって引き立ちます。新善光寺の秋の庭園の大きな魅力です。


庭の奥、愛染堂の散り紅葉

新善光寺は時期公開を公表していませんが、近年は一般的に公開の頻度が高くなる傾向があります。春の庭園には、泉涌寺山内では珍しく枝垂れ桜があり、とても美しいと聞きます。次の美しい季節の公開も期待したいものです。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。


日本で最もベールに包まれた善光寺とは何ぞや?

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泉涌寺 新善光寺
秋の新善光寺展
【京都市観光協会サイト】

会期:2018年11月17日(土)~12月1日(土)
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00

※11/24までの前期展示、11/25以降の後期展示で一部展示作品/場面が入れ替えされます。
※この寺の堂宇は、観光目的では常時公開されていません。次の公開時期は未定です。
※この寺の庭園は、毎年成人の日の「泉山七福神巡り」に限って定期公開されます。

泉涌寺 新善光寺
【泉涌寺 公式サイト】http://www.mitera.org/sannai/?id=15

◆おすすめ交通機関◆

JR奈良線・京阪電車「東福寺」駅下車、徒歩15分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:20分
京都駅→JR奈良線→東福寺駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。

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