てつのくじら館に続いて大和ミュージアムをレポートします。戦艦大和の26mもの巨大レプリカが訪問者をまずはあっと言わせます。ゼロ戦や魚雷などの実物展示や数多くの空母などの模型も交え、明治以降の日本海軍と軍港・呉の歴史をとても丁寧に解説しています。大和を造った高度な造船技術が、戦後の高度成長に大きく貢献したことも学べます。
戦艦大和の生涯の解説には目を熱くします。大和は実戦で活躍することはほとんどありませんでした。そんな大和が撃沈され海底で眠っている姿は、まるで殉教した聖人のようです。
広島市の原爆ドームや平和祈念資料館と並ぶ、戦争という人類の犯した過ちと向き合えるかけがえのない展示施設です。なぜ戦艦大和が最後の出撃を行わなければならなかったのか、深く考えるよい機会になります。

大和の巨大レプリカ
大和ミュージアムは、正式には呉市海事歴史科学館と言います。大和ミュージアムという通称が有名すぎて、地元の人でも正式名を知らないのではと思えます。2005年にオープンした初年度は、その年大ヒットした映画「男たちの大和」の効果もあって160万人の来館者を集めます。160万人というのは同年の広島市の平和記念資料館の1.5倍です。地方のミュージアムとしてはいかに多かったかがわかります。
人気の秘密はやはり戦艦大和の1/10サイズの巨大レプリカです。入館直後に目にすることもあり、入館者の目は釘付けになります。大きさはさておき、とても精巧に作られている印象を受けます。現在のこされたあらゆる資料を踏まえて再現されており、新たな史実がわかるとそれにあわせて改造するほど徹底しています。
大きいだけに細部のごまかしがきかないようで、本当にリアルです。戦争するために造った船のレプリカですが、金属や木の甲板の質感を目にすると、美しいと感じるほどです。

空母赤城も呉で建造された
続いて軍港・呉の歴史の展示を見ます。呉は村上水軍の頃から天然の良港として知られ、明治になって政府が全国に4か所設けた海軍の根拠地の一つとして発展してきました。海軍工廠と呼ばれた艦艇を造る軍需工場は横須賀をはるかに上回る規模で、世界最大級でした。また近隣の江田島には海軍の将校を養成する兵学校も設けられます。まさに日本海軍の母港のような街になっていきます。
呉海軍工廠で建造された軍艦の模型も多く展示されています。真珠湾攻撃で主力の空母として活躍した赤城と蒼龍も呉で建造されました。軍艦ファンの方にとっても聖地のようなミュージアムでしょう。

大和の生涯の展示には多くのスペースが割かれています。史上最大の巨体と主砲を生んだ高度な技術や、建造を隠すための途方もない労力から、大和が日本海軍にとって虎の子のような存在だったことが分かります。
真珠湾攻撃によって海戦は航空戦が中心になり、日本海軍は大和の出番を結果的に自ら奪ってしまうことになります。アメリカ海軍のように陸上への艦砲射撃に使うこともなく温存され、他艦の乗員からは「大和ホテル」と揶揄されていました。
1945年4月6日夕刻、大和は瀬戸内海から沖縄へ向けて出撃します。大和を囮にしてアメリカ海軍の航空戦力をおびき出し、そのすきにアメリカ空母への航空機による特攻攻撃を目論んだのです。米軍の攻撃にさらされる沖縄の負担を下げる意図もあったようですが、成功する可能性はほぼない作戦でした。翌日、米軍機の2時間の攻撃の後、大爆発を起こして沈没します。

潜水調査で確認された大和の残骸の模型
大和は、屋久島の西方200kmほどの東シナ海の水深345mの海底に静かに眠っています。特攻という死に方を命じられた史上最大の戦艦は真っ二つに折れています。名誉ある死を選んで切腹した武士のよう、疲れ果てた姿をさらしている、いずれにも見えます。
大和の存在は、戦時中はほとんど国民に知られていませんでした。最後についても報道されず、現在のように有名になったのは戦後に小説化された後です。大和は、戦争の実情が国民に正しく伝えられなかった典型例の一つなのです。
大型資料展示室では、高さ2mの大和の主砲の砲弾やゼロ戦、潜水艦の特攻兵器「回天」が展示されています。回天も呉海軍工廠で製造され、約100名の若者が出撃しましたが戻ってきませんでした。
戦艦大和に象徴される、敗色濃厚の戦争末期の日本軍が選択した戦い方を、大和ミュージアムはきちんと伝えています。日本軍や戦争を美化しているような印象は受けません。

ミュージアム入口は出店も多くとても賑やか
観光客が少なかった呉市は、大和ミュージアム開館後にすっかり観光都市に変貌しています。呉→広島→宮島→岩国と広島湾を回遊する観光コースも定着しているようです。
今年7月の台風で大きな被害を受けたJR呉線は、呉市と広島市の間は9月に運転を再開しています。12月には三原までの全線で運転を再開します。災害地に旅行することは経済活動に貢献しますので、復興を早めます。ぜひ呉にお出かけください。
こんなところがあります。
ここでしか味わえない「空間」があります。
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呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)
【公式サイト】https://yamato-museum.com/
原則休館日:火曜日
入館(拝観)受付時間:9:00~17:30
◆おすすめ交通機関◆
JR呉線「呉」駅下車、徒歩5分
JR広島駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:40~50分
広島駅→JR呉線→呉駅
広島駅まで新幹線で 新大阪駅から1時間20分、東京駅から4時間
※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることをおすすめします。
※この施設には有料の駐車場があります。
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