日本文化を知る殿堂を年1回味わえる ~日文研 一般公開2017

いかにも本を好きにさせるデザインの図書館

 

 

京都の西、桂の山手にある国際日本文化研究センターは、日本の文化が世界でどのように見られているかを研究するとともに、世界中の日本文化研究者を支援する国立の研究機関である。正式名称より略称の日文研(にちぶんけん)の方が、はるかに知られているだろう。

 

近年は、テレビ出演やベストセラーによって所属する研究者に有名人が多くなり、組織としてもよく知られるようになった。NHK-BS「英雄たちの選択」司会の磯田道史とコメンテーターでよく登場する倉本一宏や井上章一、ベストセラー「応仁の乱」の著者・呉座勇一ら目白押しだ。そんなせいか、10月28日(土)に行われた一般公開に足を運んだが、たくさんの人で非常に盛況であった。

 

近年は、普段は一般に非公開の公共機関や企業の施設が、親しみを持ってもらおうと定期的に一般公開するところが多くなってきた。日文研も毎年1回10月末に一般公開を行っている。施設案内ツアー、研究成果の展示、多様なセミナーといったコンテンツが用意されており、日文研がどのように日本文化の研究とサポートに役立とうとしているかをよく理解できるような構成になっている。

 

施設案内ツアーは、事務職員ではなく所属研究者がガイドを務めており、テレビで見たことがある研究者にガイドされる機会に遭遇することもある。ツアーでは図書館が面白い。図書館に入ると、吹き抜けのドーム型の閲覧室が目に飛び込んでくる。円形に3階建てで開架書庫が取り囲んでおり、欧州の歴史的な大学の図書館のような雰囲気を醸し出している。とても「知」への好奇心を刺激してくれる。

 

司書の方からの図書館の特徴のご説明から、海外で出版された外国語による日本文化研究の図書、日文研図書館で言う「外書」の収集が秀逸であることがわかる。収集のわかりやすい一例としては、世界中で出版されている「日本旅行ガイド」がある。「世界の人々は日本のどんなコンテンツに興味を持つのか?」、言葉はわからなくても写真やアルファベットの固有名詞表記である程度のことは理解でき、世界から日本はどんなところに関心を持たれているのかを知ることができる。とても興味深い収集だ。ちなみに外国の日本旅行ガイドの横には、日本語の「地球の歩き方」が並んでいる。「日本人は世界のどんなコンテンツに興味を持つのか?」、世界と対比できてとても面白い。

 

午後からの講演で「日本史の戦乱と民衆」を拝聴した。戦乱は当事者である権力者の視点で語られることが通常だが、市井の民衆に視点を置いたことが興味深い。

 

◇白村江の戦では、普通の農民がろくな軍事訓練も受けずに連れていかれてこてんぱんにやられた。

◇室町時代の土一揆は、権力への反抗ではなく、下層民が生きるために略奪を行ったもの。

◇大坂の陣で町衆が逃げた船場の様子を、オランダ商人がリアルに伝えている。

◇京都で戊辰戦争の際に逃げた市民は少なく、戦さ見物や便乗商売にやっきになっていた。

 

このような奥深い話はなかなか耳にすることはない。登壇者はテレビ出演や講演を多くこなしているのだろう、とても話が上手だ。

 

 

 

京都市の西南、山陰道を見下ろす緑豊かな地にキャンパスがある

 

 

日文研の施設は普段、図書館に限って調査研究が目的であれば誰でも利用できるが、事前に大学図書館・公共図書館を通じた利用許可申請が必要だ。申し込みの必要がない一般公開は、気軽に日文研の研究成果や施設を体験し、日本文化という「知」への理解を深めることができる非常に良い機会となる。

 

また日文研の研究者は、京都や東京で一般向けに講演会・フォーラムを積極的に行っている。多様な日本文化に関する分野で非常に質の高い話が聞ける機会となる。こちらもぜひおすすめする。

 

 

 

妖怪も優れた日本文化の一つ、日文研のあちこちに出没する

 

 

日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。

「ここにしかない」名作に会いに行こう。

 

 

磯田道史が全国を巡って発掘した古文書から描いた新しい歴史を語る

 

 

国際日本文化研究センター(日文研)

国際日本文化研究センター(日文研)
日本の文化・歴史を国際的な連携・協力の下で研究するとともに、外国の日本研究者を支援する大学共同利用機関です。日本研究者の研究会、シンポジウム等のほか、一般向けの催し物も開催しています。

2017年10月28日 一般公開「日文研の30年」

http://events.nichibun.ac.jp/ja/archives/kohkai/cal/2017/10/28/index.html